梅雨前線の影響で2日から関東や東海地方を中心に激しい雨が降り、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で3日午前10時半ごろ、大規模な土石流が発生した。県や市によると、多数の家屋が流されて約20人が安否不明となり、2人の女性の死亡が確認された。県は同日正午、自衛隊に災害派遣を要請。自衛隊や警察、消防は夜間も現地で救助活動を続けた。
市によると、安否不明者数は住民の証言などに基づいているといい、さらに変動する可能性もある。
伊豆山地区はJR熱海駅の北約1・5キロにある急傾斜地の多い地域で、住宅や旅館が点在する。
県によると、伊豆山港から西に2キロの地点の山中に崩落の跡が確認された。土砂崩れはここで発生し、同地区を流れる逢初(あいぞめ)川に流れ込んだとみられる。土石流は川に沿って流れ、伊豆山港まで到達していた。亡くなった2人は同港近くの海上で見つかった。
市内では3日午後9時現在、公民館などに264人が避難している。
同市によると、家屋に閉じ込められるなどしていた住民6人が同日夜に救助された。6人の家屋は土石流が直前まで迫る場所にあり、周囲に土砂が堆積(たいせき)して外に出られなくなっていたという。いずれも命に別条はない。この6人が安否不明になっている約20人に含まれているかは不明という。
熱海市は2日午前10時、大雨・洪水レベル3の「高齢者等避難」を発令した。土石流の被害が発生した後の3日午前11時5分に最も高いレベル5の「緊急安全確保」に引き上げた。緊急安全確保は今年の災害対策基本法改正で設定された措置。
伊豆山地区の南約8キロにある熱海市網代では、3日午後3時10分までの48時間雨量は7月としては観測史上最大の320・5ミリに上り、平年の7月1カ月の242・5ミリを大きく上回った。
静岡県ではほかにも、沼津市を流れる黄瀬川が氾濫して家屋1棟が流された。神奈川県も大雨に見舞われ、一時、最大で21市町が土砂災害警戒区域となった。逗子市では土砂崩れが発生して通行中の車両が巻き込まれ、運転していた横須賀市の50代男性が救助された。平塚市でも同日午前7時、金目川の水位が上昇して土砂災害の影響などがあるとして、全国で初めて「緊急安全確保」を発令した。
気象庁によると、梅雨前線は今後も活発な状態が続き、週明けの5日にかけて日本海側を中心に大雨が降る恐れがある。東海や関東の地盤が緩んだ場所ではわずかな雨でも土砂災害が起きる可能性があり、河川の増水や氾濫に警戒するよう呼びかけている。
4日午後6時までの24時間の予想雨量はいずれも多い所で、東海120ミリ、関東甲信と九州北部100ミリ。5日午後6時までの24時間では、九州北部100〜200ミリ、北陸、東海、中国100〜150ミリ、関東甲信、近畿50〜100ミリとなっている。
また、JR東海は3日、大雨による線路の安全確認を行うため、午後8時46分から東海道新幹線小田原―熱海間の運行を終日見合わせた。
【金子昇太、井口慎太郎、池田直、渡辺薫】