伊豆市でも文教ガーデンシティ構想の時にコンパクトシティという名称のもとに、現在の新中学校建設地付近や修善寺こども園がある場所に新中学校を中核として、こども園、公園、住宅地(後に病院移転に変更)を一体化して建設する計画でした。しかし、議会での否決を受け撤回。
その後、修善寺こども園を新設、現在新中学校と防災機能を兼ねた公園を建設中です。
伊豆市の都市構想の大きな柱であり、修善寺駅周辺1qに市役所、学校、こども園、住宅地を集中させる構想でもあります。
名称はコンパクトシティと名称を使っていませんが、内容的には文教ガーデンシティ構想の時のコンパクトシティとほぼ同様な内容となっていると私は感じていますが。
毎日新聞 2023/9/20
人口減少対策の切り札 「コンパクトシティー」破綻(その2) チグハグ国策、衰退加速
土地規制に穴 需要、郊外へ
中心地の活性化を掲げる一方で、郊外開発を認める国のチグハグな対応も、制度を骨抜きにした。中心市街地活性化法と同じ1998年には自治体に「特別用途地区」での土地利用の規制緩和を認める「改正都市計画法」、2000年には大型店の出店規制を緩和する「大規模小売店舗立地法」が施行され、大型店の郊外進出が進んだ。
中心地の衰退は続き、国は06年に「まちづくり3法」を改正し、大型店(1万平方メートル超)の出店を規制するなど郊外立地の規制を強化した。だが、青森市郊外には規制対象に満たない中規模のショッピングセンターなどが進出し、開発に歯止めはかからなかった。
16年に総務省がまとめた「地域活性化に関する行政評価」では、中活基本計画を国が認めた44件のうち目標を全て達成できた計画はゼロ。事業は「中心市街地に限定した取り組みには限界がある」などと酷評された。
コンパクトシティーに詳しい氏原岳人・岡山大准教授(都市計画)は中心市街地活性化事業について「中心部の活性化に偏重し、郊外の土地利用規制が不十分だったので失敗した。土地利用規制はハードルが高く、行政は『街のにぎわい創出』という聞こえが良いところから入ったが、結局規制ができなかったため、需要は郊外に流れてしまった」と指摘する。
こうした批判の高まりを受け、14年には特定区域に商業地や住宅地を誘導する「改正都市再生特別措置法」が施行された。自治体が「立地適正化計画」を策定し、国が補助金などで誘導を後押しする内容だ。
氏原准教授は「立地適正化計画の作成を機に郊外の開発許可を厳しくして、拠点として指定したところを再生しようという自治体も現れてきた」と評価する。
ただし、「拠点に公共施設や病院、宅地などを誘導するための有効な手段が自治体側に乏しい。また拠点を選ぶ際に住民から『なぜうちが選ばれないのか』という声が出て、拠点が多くなりすぎる」などの課題もあると指摘する。
アウガは衰退の一途をたどった。09年の市長選で佐々木誠造氏を破って初当選した鹿内博氏(75)が市長に就任した時点で、アウガは債務超過に陥っていたという。「日々の売り上げに右往左往するアウガに依存した中心市街地活性化は、砂上の楼閣だった」。16年にアウガが破綻し、鹿内氏は追加融資の責任を取って辞職した。
コンパクトシティー失敗の烙印(らくいん)を押された青森市は18年、一極化路線を転換し、複数の拠点を鉄道網でつなぐ「立地適正化計画」を作成して街の立て直しを図っている。
現在、青森市では県庁近くの市街地・新町(しんまち)周辺などで再開発が進み、真新しい商業ビルやマンションが建ち並ぶ。新町再開発には国や青森市が計約33億円の補助金を投じている。
だが、中心市街地全体の人通りはけっして多いとは言えない。青森商工会議所などが22年10月に中心市街地で実施した調査で、歩行者通行量は平日5万3044人、休日3万8088人。かつて中活基本計画で定めた目標値の7割程度にとどまった。
アウガの前で駐車していたタクシー運転手の男性(69)はこう話した。「アウガが破綻したときに比べれば、多少人通りは良くなった。んだばって(だけど)、どうせまた人も減っていくんでは。行政に振り回されてきた街だはんで(だから)、年々人口が減るのに再開発ばかり進めてもまいねびょん(だめだよね)」
政府は現在も、コンパクトシティー形成を「国策」として掲げる。都市のコンパクト化を目指す自治体を後押しするため、国土交通省や経済産業省など関係省庁による支援チームを設置。市町村の取り組みを省庁横断的に支援している。
国交省によると、コンパクトシティー化に向け商業地や住宅地の誘導区域を設定するなどの「立地適正化計画」について、今年3月末現在で全国675自治体が作成・公表などの具体的な取り組みを行っているという。【宮城裕也】
脱・車依存、人招く LRT導入で活路
中心部のにぎわい偏重から、多極的な街づくりへ。国の路線変更に影響を与えたとされるのが、公共交通を活用してコンパクトシティーを目指す富山市の取り組みだ。
富山市は2006年、国内で初めてLRT(次世代型路面電車)を本格的に導入した。老朽化したローカル線の軌道を引き継ぎ、JR富山駅北側から市北部への7・6キロを結んだ。その後も富山駅南側に環状線を整備し、駅で南北の路線を接続させるなど拡張。利用者数は堅調に推移している。
市は並行してLRT沿線の地域を「居住推進地区」に設定して住宅取得を補助した。車への依存度を下げるため、高齢者向けに市内を走る路面電車やバスの運賃が1回当たり100円になる年間パスを発行するなどし、人の流れを公共交通へと振り向けた。06年のLRT整備後、富山市中心部の人口は08年から転入超過に転じ、地価も上昇傾向にある。
氏原准教授は「交通政策と土地利用政策を一体的にやるのがコンパクトシティー政策の基本だ。日本人は手つかずの土地が好きで、人口が減少していても新築の戸建て住宅の需要が高い。だから交通を軸に土地利用をコントロールしないといけない。富山市は交通政策を中心とした居住誘導策をやっており、成果がみられ始めている」と話す。
政府も公共交通を活用した街づくりを後押しする。07年には、生活に欠かせない公共交通を確保するため、地方自治体が主体的に体制づくりを進めることなどを定めた「地域公共交通活性化再生法」が施行された。鉄道の上下分離やLRT、バス高速輸送システム(BRT)の導入などを国が支援する。さらに20年に法改正され、自治体による「地域公共交通計画」作成が努力義務化された。
宇都宮市ではLRTが今年8月26日、開業した。路面電車の開業は国内で75年ぶりで、全線新設のLRTは全国初だ。佐藤栄一市長は、市民が車だけに依存せずに、行き来しやすい都市を目指している。
ただし、コンパクト化で先行する富山市にも課題はある。富山大の唐渡広志教授(都市経済学)は「商業機能の主役は依然として郊外のロードサイド。まちなかの商店に歩いて買い物に行くという点では、まだうまくいっていない」と指摘する。
唐渡氏によると、中心部の再開発でシネマコンプレックス、スパなどが入る複合商業施設や美術館が整備されたものの、一般的には自家用車で郊外のショッピングモールなどを利用する市民の生活スタイルは変わっていないという。
唐渡氏は「このスタイルを変えるとなると、郊外の土地規制強化など痛みを伴う改革が必要になり、難しい判断となる。ただ少なくとも、中心地で店舗の建物所有者と経営者を政策的にうまく分離させるなど、高齢化してもシャッター街にならないような工夫は必要だろう」と話す。【藤渕志保、池田一生】