2023年12月21日

自民派閥の政治資金問題 刑事告発した教授がみた「裏金」 上脇博之・神戸学院大学法学部教授

東京地検特捜部が自民党安倍派と二階派の事務所を強制捜査しました。
共産党機関誌「赤旗」の記事をきっかけとして、上脇博之・神戸学院大学法学部教授が派閥の政治資金等を調べ上げ刑事告発し自民党と日本の政界を揺り動かす大事件となってきたのです。
政治資金をめぐる告発は議員個人にはあっても、派閥に切り込んだ例は今までなかったそうです。
エアポケットとなっていた自民党派閥の政治と金問題に切り込んだ上脇教授への毎日新聞によるインタビュー記事です。


2023年12月11日 毎日新聞

自民派閥の政治資金問題 刑事告発した教授がみた「裏金」
上脇博之・神戸学院大学法学部教授


自民党5派閥のパーティー収入明細過少記載問題で、東京地検特捜部の捜査が進み、岸田文雄政権を揺るがしています。

 この問題を刑事告発した、神戸学院大法学部教授の上脇博之さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】

正月返上で
 ――昨年11月の「しんぶん赤旗」日曜版の報道がきっかけでした。

 ◆赤旗の記者からコメント取材を受け、聞いた時にすぐ、大変なことだと思いました。事務的なミスではありえないと直観しました。

 同時によく調べたと驚きました。パーティー券を買っている政治団体は膨大な数に上ります。その支出記載と、派閥の政治団体の収入明細記載を突き合わせていくのは大変です。

 ――刑事告発をするために上脇さんも調べ、報道で指摘された以上の2018〜21年分で計約4000万円に上る不記載を見つけ、東京地検に告発しました。

 ◆あまりにも悪質で組織的にやっているとしか思えなかったので、告発しないわけにはいかないと感じました。

 しかし、正直、しんどかったです。今年の正月はありませんでした。当時作成した告発状をみていると1月1日とか、6日、9日の日付が出てきます。

誰が売りに来たか書いてある
 ――一つ一つチェックしたことで見えたこともあると思います。

 ◆派閥のパーティー券を買っている政治団体の収支報告書を見ていると、「44万円」などと、まとめて記載している団体がある一方で、同じ派閥のパーティー券なのに、何回にも分けて支出を記載している団体もあるのです。


 最初はなぜこんなことをしているのかわかりませんでした。

 ところが、見ていくうちに、清和政策研究会(安倍派)などの派閥の名称の後に括弧付きで政治家の名前を書いているものがありました。つまり、同じ派閥のパーティー券でも別々の政治家が売りに来て支出したものは別々に記載しているのです。

 この実態があるのですから、「名寄せで失敗した事務的なミス」という言い訳は通りません。派閥も「この分は誰が売ったか」は把握しているはずです。

これでも氷山の一角
 ――告発した分は、氷山の一角でもあると指摘されています。

 ◆パーティー券を買った政治団体側の収支報告書と派閥の政治団体側の収支報告書を突き合わせてズレがあるので、不記載がわかったのですが、それ以外にないということではありません。

 そもそも、買った側の政治団体の収支報告書に不記載があれば、わかりません。

 企業や個人の側には報告制度がないので、派閥の政治団体側の収支報告書と突き合わせることができません。派閥側に不記載があったとしても明らかにできません。

清和会の政治団体は今回、収支報告書を訂正したのですが、政治団体が買った分しか訂正していません。企業が買った分の訂正はありせんでした。事務的ミスというならば企業分もあるはずです。どう考えてもおかしいのです。

 政治団体から買った分は、記者や私にチェックされるから、訂正せざるを得なかった、としか思えません。

 企業分の不記載がないとはとても言えないのです。ですから告発した分は氷山の一角なのです。

目的は裏金しかない
 ――告発した時にはなぜこんなことをしていると思いましたか。

 ◆これで裏金を作っているのだろうとは思いました。目的としては裏金以外にありません。しかし証拠がありませんから裏金で告発するわけにはいきません。

 20万円超の明細不記載で告発して、告発状の最後に、「裏金になっている可能性がある。ぜひ捜査してください」と書きました。これは「お願い」です。

 ――当時はこうなるとは。

 ◆告発の時はいつもそうなのですが、特捜部が本格的に捜査するかどうかはわかりません。形式的な犯罪にすぎないとして不起訴にする場合もありますから。

パーティー券が事実上の企業献金に
 ――パーティーの仕組み自体の問題もあります。

 ◆本来は売った券の枚数分、基本的には全員参加するのがパーティーです。ところが政治団体のパーティーははじめから買った人が全員参加するわけではないことが前提になっています。たとえば、2000人しか入らない会場でその何倍もの券を売ります。

 それで経費を減らして収益を上げています。限りなく寄付に近い状態になっています。

 企業は政党(本部、支部)、政治資金団体以外には寄付できません。派閥のような政治団体には寄付できません。だからパーティー券を使うのです。事実上は派閥に対する企業献金です。

 ――抜け道になっています。

 ◆寄付であれば、年間に合計5万円を超えたら、いつ誰から寄付を受けたか記載しなければなりません。

 ところがパーティー券は1回のパーティーにつき20万円を超えなければ記載の必要がありません。

 たとえばパーティーを5回やって、1回20万円、年間で100万円買ってもらっても名前は記載しないですむ。名前を出したくない企業も多いので、企業もそのほうがありがたいのです。

 実態としては寄付なのに、制度としては寄付と全く違う建前になっていることが問題です。

なんのための裏金か
 ――裏金作りが、組織的でかつ慣行になっていました。

 ◆政治家は結局誰を見ているのか。裏金はその典型です。

 使途を明らかにできないカネです。選挙の買収に使う恐れも、カネで政治をゆがめる可能性もあります。

 こっそりおカネを使う政治をするという感覚の政治家が国民のための政治をやるでしょうか。

 ――政治資金規正法がある意味が分からなくなります。

 ◆政治資金規正法は政治活動におけるおカネの実態をさらけ出す、説明責任を果たすためのものです。

 結局、裏金を作ることで法の建前とは違う政治をやっているのです。

 政党助成金の制度があるのに裏金を作っているならば、納税者から見れば「泥棒に追い銭」です。

 こんな政治をしている政治家に国民の苦しい生活の実態がわかるわけはありません。

入りも絞るべき
 ――政治家は「政治にはカネがかかる」と言い訳をします。

 ◆収支報告書を見ると飲み会が多く出てきます。政治家は「政治にはおカネがかかる」と言いますが、飲み会に政治資金が必要ですか、ということです。ポケットマネーでやればいいことです。

 政治資金というと使い道ばかりが注目されますが、入りも絞るべきです。

 おカネが簡単には集まらないようになれば、飲み会には使わなくなるでしょう。

 「民主主義のコスト」と言いますが、その部分は相当に充実しています。立法事務費も調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)もあり、政策秘書1人、公設秘書2人は公費です。選挙も公営があります。

 政党助成金も企業献金も、もらわなければやっていけないという言い訳は通用しません。

 ――外部監査が必要という声も出てきます。

 ◆市民や報道機関が立ち上がる原則を忘れてはなりません。

 たとえば、居酒屋で友だちと飲んでいる時に、地元の政治家の収支報告書をスマホでみてみる。すると、この居酒屋で会議をしたことになっている。「ここでどうやって会議をするんだ」となります。

 「うちの選挙区の先生はなにをやっているのか」と、みなが言う社会になれば、政治は変わります。

posted by イズノスケ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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