2月19日・伊豆日日新聞コラム「狩野川」には3月10日に予定されている伊豆半島で計画されているトレイルランについて書いています。
その内容は以下のようです。
山岳を走るトレイルランニングレースが最近、全国で開催され人気が高い。来月10日に予定される伊豆半島で初の「伊豆松崎・修善寺間山岳競争大会」(実行委員会主催)に対し、一部から「天城の貴重な自然が壊される」と心配する声が上がる。
全国から1500人が出場。募集開始2日で満杯になった。松崎新港を五千6時にスタートし、旧天城峠〜猫越峠〜仁科峠〜船原峠〜達磨山〜戸田峠〜修善寺温泉までの70キロのコース。海から山へ、風光明媚で自然豊な山稜線を踏破する。
天城の自然を愛する後藤さんは、「特に問題なのは二本杉峠〜猫越峠〜仁科峠。天城連峰は火山で形成された山々。地盤はきわめて脆弱。短時間に千人以上が駆け抜けると負荷は計り知れない。トイレの問題もある。
伊豆の自然保護団体は「貴重な植物が踏み荒らされる」と懸念。一方、実行委員会の松本潤一郎さん(30)は「貴重なブナの原生林が残る二本杉峠〜仁科峠には監視員を13人配置し、コースを外れないよう徹底する」と力説。トイレは各補給所に用意するほか、携帯トイレを持参しないと参加できないルール。ストック使用も全面禁止。後藤さんは「当日、仲間と実態調査したい」と話す。
松本さんは「レース前後に土がどの程度踏み固められたかなど環境アセスメントも実施する」と言い、主催者は自然保護に配慮。日本を代表する自然と共生する恒例大会になればと願う。シカなどによる食害や森林の放置による天城山の荒廃は、この伊豆日日新聞でも度々特集で取り上げられるように激しい勢いで進んでいます。
特にシカによる食害はひどく、植物は毒のあるもの意外は食い尽くされ、冬季には樹木の皮を剥ぎ取る被害で樹木もいたるところで枯れ、倒壊しています。
そうして植物が食い荒らされた土地はやせ細り、土砂が流されやすくなり、急傾斜地での崩壊が頻発しています。
そして、かっては藪などで遠くまで見渡せなかった山々は、今では遮るものが無くどこまでも見渡せるようになってしまいました。
天城山はそうした危機のさなかにあるのです。
これは登山をする人にとって広く知れわたっているのです。
登山道はたくさんの人が行き来するところではないことは、誰でもわかることでしょう。
登山道はたまには広いところもありますが、2人がすれ違うことができるような狭い所がほとんどであり、待っていないとすれ違えないように狭いところもあります。
旧天城峠〜二本杉峠の登山道はがけ崩れなどで荒廃しています。
このコースの中で後藤さんが心配している二本杉峠〜仁科峠は私も何度も行き来していますので良く知っています。
猫越峠〜仁科峠間の登山道は火山灰でできた柔らかい土で覆われ、雨の後登山しようものなら登山道はぐちゃぐちゃです。一部急傾斜では滑って登ることも大変な所もあります。そうした箇所には滑り止めも設置していますが、千人ものランナーが駆け下りたらひとたまりも無いでしょう。
何よりも恐れるのはこれほど長いコースにたった13人しか監視員を配置しないことです。長い道中を13人でどうやって監視するのでしょうか。まず不可能でしょう。
1人か2人しか通れない登山道を1500人が走った時どうなるかは分かりきったことです。普通の登山ではなく競技ですから人よりも早く走らなければなりません。その時ランナーはどこを走るのか。登山道をはみ出なければ前に進めないのです。
登山道でないところを多数の人間が走ったときどうなるか。
そこには新たな道ができてしまうのです。そこから水が流れ次第に深くなり、新たな山の崩壊が始まるのです。
伊豆日日新聞は特集を組んで「天城の自然を守れ」と主張しているのですから「日本を代表する自然と共生する恒例大会になればと願う」と願っているだけでなく、どうしたら貴重な自然を崩壊させないようなトレイルランにしたいのかをもっと問題提起して欲しいものです。
そして主催者はランナーがはみ出したり、登山道を荒らさない具体策をもっと考えることが必要ではないでしょうか。
自然はいったん崩壊してしまったら修復するには膨大な時間と費用が必要になってくるのです。
私たちの愛する天城山を守るにはどのようにしたら良いのか。全国から来てくださるランナー共々、行政も地元の人間も真剣に考える時だと思います。
<参考>
ウイキペディアによると
トレイルランニング(Trail running)は、ランニングスポーツの一種で、舗装路以外の山野を走るものをさす。
不整地を走るランニングスポーツとしては、以前からクロスカントリーがある。欧米では盛んだが日本ではあまり知られていない状態であった。その後マラソンブームや登山ブームの波にのって、両者の要素を併せ持つ「トレイルランニング」が知られるようになっている。
マラソンと同様にほとんど装備を持たずに走るクロスカントリーとは異なり、トレイルランニングでは専用の小型リュックサックに必要な装備を入れて走ることが普通である。
近年のトレイルランニングの普及によって専用の装備も開発されるようになり、トレイルランニング製品の市場も拡大しつつある。例えば、シューズでは、登山靴でもランニングシューズでもない、軽く走りやすくグリップの良いトレイルランニング用シューズを使うことが認知されてきた。また、水筒の代わりにチューブを使って給水できるハイドレーションシステム、走りをサポートするストックなども、使われるようになってきている。